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院長 山本従道からの病気のお話



運動療法について

前々回は多危険因子症候群(マルチプルリスクファクター症候群)についての話で、
インスリン抵抗性が病気の根底にあり、内臓脂肪肥満が悪いということを
滝の図と海に浮かぶ氷山の図を用いて説明しました。

生活習慣病では、その用語で明らかなように生活習慣が病気の成因に関連しています。
従って治療として、まずは適切な食事療法が大切となります。
身長から適正体重が計算され、体を動かす程度により体重あたり25─30Kcalを掛けて
一日の摂取カロリーをきめます。
これに関しての詳しい話は別の機会にしましょう。

さて、今回は運動療法の話ですが、
食事療法が大切だからといって、例えば断食のような無理な食事療法のみを続けますと、
体に必要な水分や筋肉が減少してしまって、体重は確かに減り痩せてきますが、
脂肪の割合は減らないことになります。
動脈硬化を進めたり、血液の凝固系を亢進させたり、
血管病変を悪くする物質を作っている脂肪細胞が変化しなければ、
体重を減らした効果が薄いことになります。
この時食事療法に運動療法を併用すると、筋肉の萎縮を防止でき、
減量も効果的にできることになります。
4000歩程度では若干少ないですが、
今までの生活より1000〜2000歩増やすだけでも有効です。
できれば一万歩程度。

●運動の強度について
強すぎると、グルカゴンという血糖を上昇させる物質や副腎のホルモンが多く分泌され、
むしろ血糖を上昇させる可能性があります。
適度な運動は、筋肉内へのブドウ糖の取り込みが促進され、
インスリン抵抗性という現象を改善させる効果があります。
心拍数で100程度になる運動で、 隣の人と笑って話しながら続けられる程度の強さが最適です。

●運動の時間について
短いと細胞の中のエネルギー源として炭水化物しか使われないので、減量の効果は弱くなります。
20−30分間 続けて行えば脂肪の燃焼につながりより有効といわれています。
しかし10分間を3回繰り返してもそれなりの効果は認められます。
頻度としては週3−4回行えば、立派な運動療法といえるでしょう。

●運動の種類について
酸素を使いながら行う運動(有酸素運動といいます)が、
体のほかの所への負担も少なくお勧めです。
短距離走や重たいものを持ち上げる運動などは、
血圧も上昇し心臓や血管に悪いものがあります。
ジョギングや早足で歩くなどの運動のほうが安全です。
さらに膝や腰の悪い人は関節に負担がかかって痛みが出てきますので、
特に肥満の方、高齢の方には、プールでの水中ウォーキングが最もお勧めです。
水の中では、体の容積分の浮力で関節への負荷 が減少し、
水への抵抗を押し分けて進むことで短い時間に効率的に運動量を増やすことができ、
一石二鳥です。
幸い 疾病予防運動施設クアリウムシャレーが近くにありますので
どんどん利用してもらいたいものです。

このように運動療法が、肥満に有効で体重減少につながるわけですが、
この作用は運動で脂肪が燃焼することよりも、
糖の利用を促進するなどのインスリン抵抗性を改善することのほうで効いていると
考えられています。
従ってインスリン抵抗性が改善し血圧が下がったり、
高脂血症特に中性脂肪の増加を改善するなどの効果も伴うわけです。
こうして生活 習慣病全体を改善していくことが証明されています。
このような効果は、筋肉量に影響されるとも言われています。
高齢者で筋の萎縮がすすみ筋肉量の少ない状態では、運動療法の効果が弱いことになります。
その時には、筋力アップをはかって筋肉量を増やすようにすると、インスリン反応性も改善し、
歩行も安定し転倒予防にもなり健康増進につながります。
筋力増強の運動の仕方は、関節へ負担を考慮することが大切ですので、
詳しくはリハビリの指導が必要です。

運動療法全般として大切な最後のポイントは、継続するということです。
良いことを緩やかに、長く続けることが大切です。
自分の好みに合ったやり方をマイペースに行うのが一番です。
うまく行えば、運動療法と食事療法で、高血圧の薬が不要になったケースもあります。
生活習慣病の方、肥満の方、運動療法をと思われる方、リハビリの指導を受けたい方、
診療所にご相談ください。


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