今回は肥満のお話です。
日本肥満学会から、肥満の新しい診断基準が提示されました。
従来は、理想体重から20%以上越えて体重が多い状態を肥満としていました。
理想体重は、有病率などの統計から、
体重÷身長(m)÷身長(m)が22の人が最も健康であることから、
体重÷身長(m)÷身 長(m)をBMI(bodymassindex)と定義して、
肥満の判定に使っています。
その時の体重での肥満に関する数値は、
BMI=体重÷身長÷身長、理 想体重=22×身長(m)×身長(m)、
肥満度(%)=(実際の体重−理想体重)÷ 理想体重×100
と計算されます。
例えば、身長160cm、体重50kgのA子さんの場合は・・・
BMI=50÷1.6÷1.6=19.5
理想体重=22×1.6×1.6=56.3
従って
肥満度=(50−56.3)÷56.3×100=−11%
となるわけです。
このような中で、肥満学会の新しい診断基準ができました。
BMI |
判定 |
WHO基準 |
<18.5 |
低体重 |
underweight |
18.5≦ <25 |
普通体重 |
normal range |
25≦ <30 |
肥満(1度) |
preobese |
30≦ <35 |
肥満(2度) |
obese class T |
35≦ <40 |
肥満(3度) |
obese class U |
40≦ |
肥満(4度) |
obese class V |
肥満と判定されたもののうち、以下に挙げる健康障害を有するもの(表2)
肥満と判定されたもののうち、内臓脂肪肥満の基準を満たす(表3)これを肥満症とする。
表2 : 肥満に関する健康障害 |
1、 糖尿病(2型)耐糖能障害 |
2、 脂質代謝異常 |
3、 高血圧 |
4、 高尿酸血症、痛風 |
5、 冠動脈疾患 : 心筋梗塞、狭心症 |
6、 脳梗塞 : 脳血栓、一過性脳虚血発作 |
7、 睡眠時無呼吸症候群、pickwickian症候群 |
8、 脂肪肝 |
9、 整形外科疾患 : 変形性膝関節症。腰痛症 |
10、月経異常 |
表2のうち、1〜4までは、いわゆる生活習慣病に入るものです。
5・6は、生活習慣病の結果起こる動脈硬化症によって、心臓や脳の血管の障害が起きたものです。
7の睡眠時無呼吸症候群というのは、睡眠中の呼吸の障害で、
pickwickian症候群というのは、高度肥満のため昼間の起きているときでも
うとうととしてしまう、呼吸不全の病態の一つです。
チャールズディケンズの小説に出てくる異常に肥った少年の記載から命名されたものです。
8は、肝臓に脂肪がつきすぎた状態で、血液検査か超音波検査で診断されます。
9の整形外科疾患については、実際に体重の負荷が膝などに悪くて起こるものです。
10の生理の異常は、高度に肥満でも生理がなくなりますが、異常な痩せでも月経異常が起こります。
表3 : 内臓脂肪肥満 |
1、腹部CT検査で内臓脂肪面積 ; 100cm2以上 |
2、ウエスト周囲径 ; 女性90cm、男性85cm以上 |
表3の内臓脂肪肥満という考え方は、
体重そのものが多くなくても腸間膜などの内臓の脂肪が増加した状態では、
生活習慣病に見られる様々な危険な状態が起こりやすいという事実から提唱されているものです。
従って異常に体重が多くても例えば、相撲の力士のように皮下脂肪が非常に厚い肥満では
内臓脂肪は多くなく危険が少ないことになります。
診断的には腹部のCT検査をしないと内臓脂肪面積は計れないわけですが、
簡便的にウエスト径で判定しようとしたものです。
女性のほうが数字が高いのは、脂肪分布の性差が加味されています。
以上のような新しい診断基準で、これからは
●肥満というのは、BMI25以上
●肥満症というのは
・肥満であって何かの健康障害があるか
・肥満であってウェスト周囲径が90cm以上の人
ということになります。
肥満にはまずは運動療法。次に食事療法が大切です。
食欲の秋ですが、体重の増加に気をつけましょう。
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